腎臓を守りたいなら、「リン」の話をしよう!
投稿者 :KobayashiMay on

「リン」を一括りにすると危ない!
腎臓トラブルを語る時、必ず出てくる「リン」の話題。
しかし、一言で「リン」と一括りにしてしまうと、本質を見極められなくなるのが「リン」の厄介なところです。
「リン」は、体に取り込まれた後、どのくらい吸収されるかによって、それぞれ性質の違う別物の「リン」として考える必要があります。
まず第一段階として「無機リン」と「有機リン」に分けて考えます。
有機リンには、
動物性タンパク質(肉や魚自体に含まれる)の有機リンと、
植物性タンパク質(穀物や豆類に含まれる)の有機リンがあります。
植物性タンパク質のリンは、「フィチン酸」という形になっていることが多く、犬や猫の消化管では分解・吸収されにくいという特徴があります。
無機リンというのは、pH調整剤などの添加物として使われる、吸収率が恐ろしく高いリンのことです。
無機リンは、ほぼ100%吸収される!
体に取り込まれたリンの吸収率を比べると
無機リン(添加物): 90%以上(ほぼ100%) → 【極めて高い】
有機リン(動物性): 約60%(50〜70%))→ 【中〜高い】
有機リン(植物性): 20%以下(10〜30%) → 【低い】
最も吸収率が高いのは、加工食品などに使われる「無機リン(=食品添加物)」で、ほぼ100%吸収されてしまいます。
腎臓病の犬猫にとって、この無機リンは、食材由来のリンよりもはるかに警戒すべき存在で、是非とも避けたいものになります。
では、その問題の「無機リン」
具体的にどのような目的で、どんな名前で使われているのか見ていきましょう。
ペットフードの「無機リン」の正体

1. pH調整剤(酸味料)
フードの酸性度(pH)を調整するために使われます。
保存性を高める効果もありますが、ペットフードでは特に「尿路結石(ストルバイト結石)の予防」を目的として、尿を酸性にするために添加されるケースが非常に多いです。
原材料名での表示例:
⚫️リン酸
⚫️リン酸ナトリウム
⚫️リン酸カリウム
または、単に「pH調整剤」と一括表示されている場合があり、これが大変厄介です。
【リンと尿のジレンマ】
結石予防のために食べていた「pHコントロール系」のフードには、この無機リン酸塩が多く使われていることがあります。
しかし、シニアになって腎臓機能が低下してきた時、今度はこの無機リンが腎臓の大きな負担になってしまうという、難しい問題があります。
2. 結着剤・乳化剤(増粘安定剤)
特にウェットフードや、半生タイプのフード、加工肉(ジャーキーなど)で使われます。
お肉同士を結着させて食感を良くしたり、水分と油分が分離しないように安定させる目的で使われます。
原材料名での表示例:
⚫️ポリリン酸ナトリウム
⚫️ピロリン酸ナトリウム ⚫️ピロリン酸カリウム
⚫️メタリン酸ナトリウム
または、単に「増粘安定剤(結着剤)」などと一括表示されている場合があります。
3. 栄養強化剤
総合栄養食の基準を満たすために、カルシウムとリンのバランスを調整する目的で添加されることがあります。
これは必要な添加とも言えますが、化学的に合成された無機リンであることに変わりはありません。
原材料名での表示例:
⚫️第二リン酸カルシウム など
気をつけるべきポイント
厄介なのは、これらの無機リン酸塩が「pH調整剤」や「増粘安定剤」といった一括名で表示され、具体的な物質名が隠れてしまっていることが多い点です。
腎臓ケアのためにフードを選ぶ際は、以下の点に注意してみてください。
🔴原材料表示をよく見る: 「リン酸〇〇」「ポリリン酸〇〇」といった記載があるものは避けるのが賢明です。
🔴安価なウェットフードやジャーキーに注意: 食感を良くするためや増量のために、結着剤として多用されていることがあります。
🔴メーカーの姿勢を確認する: 腎臓ケアを謳っているフードでも、リンの「総量(数値)」は低くても、その中身が吸収率の高い「無機リン」で構成されている場合もあります。
「合成添加物不使用」「無添加」を掲げているメーカーや、リン源として食材(骨粉や肉類など)の有機リンをメインに使用していることを明示しているメーカーのフードを選ぶことが、見えないリスクを避ける確実な方法となります。
製法とリンの関係
腎臓ケアの視点から、リンのリスクを最小限に抑えるためには、以下の優先順位で考えると良いでしょう。
🔴最優先:原材料に「無機リン添加物」が入っていないか確認する。 どんな製法であれ、まずこれが最も重要です。「リン酸〇〇」「pH調整剤」などの表記を避けましょう。
🔴製法に注目する: 同じような原材料であれば、高温のエクストルーダー製法よりも、「低温製法」や「コールドプレス」、あるいは「フリーズドライ」の方が、食材の変性が抑えられます。
リンが自然な形で(有機リンとして)保たれている可能性が高いため、吸収率の観点から、腎臓への負担はより少ないと考えられます。
表示から読み解けない 隠れた「リン」

「増粘安定剤」「結着剤」「乳化剤」
↑これらは法律や用途によって細かい定義はありますが、ペットフードにおいては、「フードの質感、とろみ、形を調整・維持するために使われる添加物の総称」として使われることが多いです。
⚫️増粘剤・安定剤: 「とろみ」をつけたり、ゼリー状に固めたり、水分と油分が分離しないように安定させる。
⚫️結着剤: お肉やお魚の組織をつなぎ合わせて、ハムやソーセージのような形に保つ。(ドライフードの粒を固めるのにも使われます)
⚫️乳化剤: 本来混ざり合わない「水」と「油」を均一に混ぜ合わせる。
これらは役割が重なることも多いため、一括して「増粘安定剤」などと表示されることがあります。
増粘安定剤/結着剤/乳化剤の具体的な種類
これらは大きく分けて、植物や海藻などから取れる
「天然由来」のもの(=多糖類)と、
化学的に合成された「ミネラル由来」のもの(=無機塩類)があります。
① 植物・海藻・微生物由来の「増粘多糖類」
「多糖類」とは、糖がたくさんつながったネバネバした物質のことです。これらは基本的にリン源ではありません。
【主な種類と特徴】
▪️カラギーナン: 紅藻類(海藻)から抽出。ウェットフードのゼリー部分や、とろみ付けに非常に多用されます。
▪️グァーガム、ローカストビーンガム: マメ科の植物の種子から抽出。
▪️キサンタンガム: トウモロコシなどのでんぷんを微生物が発酵させて作ります。
▪️アルギン酸ナトリウム: 昆布やワカメのヌルヌル成分。
② ミネラル由来の「結着剤・乳化剤」(腎臓ケアで注意が必要なもの)
こちら↓が、「無機リン」の正体です。
主に肉の加工品や、安価なドライフードの結着、チーズなどの乳化に使われます。
主な種類(リン酸塩):
❌ポリリン酸ナトリウム
❌ピロリン酸カリウム
❌メタリン酸ナトリウム など
これらは、強力な結着力と保水力(肉をジューシーに見せる力)があるため多用されますが、100%吸収される無機リンの塊です。
腎臓ケアの視点での大きな違い
ペットフードの原材料表示で、単に「増粘安定剤」とだけ書かれていた場合、それが
①の多糖類なのか、
②のポリリン酸ナトリウムなどの無機リンなのか、
消費者には判別がつきません。
(※「増粘多糖類」と書いてあれば①、「結着剤」と書いてあれば②の可能性が高いですが、絶対ではありません)
腎臓ケアのためにフードを選ぶ際は、リスクを避けるために、
「増粘安定剤」「結着剤」といった一括表示があるフードは避け、
とろみ付けが必要な場合は「でん粉(タピオカ、サツマイモなど)」や「寒天」など、
正体がはっきりしている食材を使っているものを選ぶのが安心です。

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